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「日経コミュニケーション」 1997年3月3日号より

 カテゴリ3とカテゴリ5の違いは?

LAN用のケーブルに,カテゴリ3とカテゴリ5の両方を使っています。
3と5では品質が異なると聞きましたが,具体的に何が違うのでしょうか。
(神奈川県・機械)

 
カテゴリ3と5では,電気特性が違う
3は16MHz,5は100MHzまでの特性を保証
 LAN の配線で用いられるケーブルの一つに,UTP(unshielded twisted pair) ケーブルがあります。UTPケーブルは2本の導線(絶縁した銅線)をより合わせて対(つい)にし、4対まとめて外被に納めたケーブルです。4対ケーブルの他に25対をまとめたUTPもあります。
 UTPを品質によって4種類に分けたのがカテゴリです。カテゴリ1、2のケーブルは音声や低速データの伝送に利用されます。LAN用に使われるのは、カテゴリ3〜5のケーブルです。カテゴリの数字が高くなるほど、品質は高くなります。カテゴリ3〜5の品質については、ANSI/EIA/TIA-568A で規定されています。また、ISO、JISにもほぼ同一の規格が定められています。
 規格では、ケーブルの機械的特性、電気的特性が決められていますが、特に重要なのは「減衰量」と「クロストーク」の周波数ごとの特性です。減衰とは、ケーブル中を伝送する電気信号が伝送中に弱まってしまうことです。クロストークは伝送中の電気信号が漏れ、隣接する他のより対線に混入する現象です。減衰やクロストークの影響は伝送する周波数が高いほど大きくなります。

より対線のより間隔で品質を上げる
 規格に決められた減衰やクロストークの数値を実現するために、カテゴリ3とカテゴリ5のケーブルでは、より対線をよる間隔を変えています。このよる間隔を「よりピッチ」といいます。よりピッチを小さくすることによって、銅線から漏れる電気信号を打ち消し合う効果を強められるため、クロストークを改善できるのです。ただし、ケーブル中のより線のピッチは同じではありません。同じピッチにすると、導線から漏れた電気信号を打ち消す効果が弱くなってしまうからです。
 よりピッチが小さくなるとケーブルの重量が多少増加しますが、他に大きなさはありません。カテゴリ5ケーブルの生産量が増えたこともあり、最近ではカテゴリ3と5のコストはほとんど変わらなくなっています。
 カテゴリ3は16MHz、カテゴリ5は100MHzまでの周波数での電気特性を保証します。カテゴリ5はカテゴリ3の特性も保証しているので、カテゴリ3のケーブルの代わりにカテゴリ5のケーブルを使うことができます。20MHzまでの特性を保証するカテゴリ4もありますが、特性がカテゴリ5とあまり変わらないため、カテゴリ4のケーブルが用いられることはほとんどありません。
 高速度の通信では、一般に信号の周波数が高くなります。ただし、注意していただきたいのは、データの伝送速度とケーブル上の信号の最高周波数は必ずしも同じではないということです。10BASE-T の場合には、10Mビット/秒に対して信号の最高周波数は10MHzですが、100BASE-T4 では伝送方式を工夫することにより、100Mビット/秒の伝送速度に対して最高周波数を12.5MHzに抑えています。このため100BASE-T4 ではカテゴリ3のケーブルが使えます。また、156Mビット/秒のATMでも最高周波数が78MHzとなっているので、カテゴリ5のケーブルを使用できます。このほか、ギガビットイーサネットも光ケーブルだけでなくカテゴリ5のUTPケーブルでも使えるようにする方向で、現在審議されています。

シールドされたSTPが適当な場合も
 LANで使うケーブルには、UTPのほかにSTP(shielded twisted pair)もあります。STPは銅の編み線等を使って、より対線をシールドしたケーブルです。アルミ箔でシールドしたケーブルは特にFTP(foil screened twisted pair)と呼ばれます。
 UTPはシールドを持たないため、わずかですがケーブルから電磁波が放射されます。米国やヨーロッパでは電磁適合性(EMC:electromagnetic compatibility)の基準が厳しいため、病院などではシールドを施したSTPケーブルが使われることがあります。日本では明確な基準がないため、電磁波放射対策の観点からSTPを用いることはあまりありません。ただし、工場の配線などでは、ケーブル外からのノイズ耐性を向上させる目的でSTPが使われることがあります。

(株)フジクラLAN技術部 課長補佐 中川三紀夫