「オープンネットワーク」 1997年3月号より
雑誌に掲載されたものは、私の書いた原稿から一部が削除されたものでした。紙面の都合もあるでしょうから、分量の調整はわかるのですが、無断で内容を改変したのは許しがたい。と、いうわけでオリジナルの完全版をのせます。
家の中にLANを張ってから2年近くになる。意図したわけではないが、マッキントッシュだけのネットワークになっている。Windows
マシンをLAN上にのせることも計画したのだが、Windows95
のパッケージを買っただけで頓挫してしまった。
最初は元祖 Mac II
(CPUアクセラレータつき)をスタンドアローンで使っていたが、PowerBook
520c
を会社から支給され家に持ち帰るようになった。フロッピーディスクでのファイル交換は面倒なため、LANの利用を考えた。アップルのマシンは
LocalTalk という独自のネットワークを構成することができるが、LocalTalk
はCPUの負担が大きく、体感速度的にも低速であるため、Ethernet
を使うことにした。
PowerBook 520c は Ethernetのインタフェースを持っているので、秋葉原のジャンク屋でトランシーバーだけを買ってくる。MacIIにはNICを個人輸入してバスに挿す。HUBは会社に無理を言って格安(社員価格だそうだ)で売ってもらった。そのうちに、妻が自分用のマシンがほしいと言いだしたので、Performa630を購入した。これにもNICを入れ、接続した。それまではLANといっても同じ部屋で終始していたから、配線というほどのことはしていなかった。2mほどの長さの
10Base-Tのケーブルをつないだだけである。ところが、妻のマシンは隣の部屋に置くことになった。しばらくの間、ケーブルがじゃまだと顰蹙を買ったが、けっきょく電気工事用のステップルで壁に固定した。部屋の境はドアの隙間を通している。素人工事でけっして美しいとは言えないが、用は足りるのでこれでよしとしている。配線するにあたって、10Base-T
のケーブルを100mばかり買ったが、狭い家の中の配線では20mもあればおつりが来る。今のところ使うあてもないので始末に困っている。この時にRJ−45プラグ用の圧接工具も購入した。いろいろさがした結果、5000円ほどのものを見つけたが、素人にはこれで十分だ。工具のはいっていたケースは子供のおもちゃになっているので、それまで考えると、きわめて安い買い物だったといえる。工具というのは、持っているだけでうれしいものだし。
妻のマシンは、ごく一般的な家庭向けパソコンとして使われていると思う。年賀状の整理をしたり、ゲームをしたりというものだ。4才になる子供もこのマシンを使うが、彼はこのマシンを自分のものだと思っているようで、「ぼくのコンピュータ」と呼んでいる。エディタで画面いっぱいに数字を並べるのが好きだ。いつの間にか、カーソルとリターン、バックスペースを覚えたようだ。ハードディスク中のファイル名を書き換えられて閉口したこともある。いつのまにか全部数字になっていた。彼はインタラクティブなCD−ROMのタイトル「おばあちゃんとぼくと」や電車の運転のシミュレータがお好みだが、マウスを扱う様子は堂に入ったものだ。特におじいさん、おばあさんには自慢げに操作を教えている。遠からず、ネットワークの機能も使い出すのではないか。そうしたら、子供と対戦型のゲームをするのだ。
その後、PowerBook150 とHPの DeskWriter
を知人から譲り受けた。故障しているはずだったが、なんの問題もなく使えている。このふたつは
Ethernet のインタフェースを持たないため、LocalTalk
で接続している。Ethernet と LocalTalk 間は、Asante 社の Micro Asante
Print というものを介して接続している。LocalTalk
は低速であるが、PowerBook150 も DeskWriter
も遅いので気にしないことにしている。
LAN上のプロトコルはもっぱら AppleTalk を使っている。AppleShare
によりピアツーピアで接続してファイルを転送したり、他のマシンのドライブをマウントしている。Mac
II
以外のマシンにはそれほど大きなハードディスクをのせていないので、そうしないと使いものにならないという事情もある。プリンタ出力もLAN経由だ。一時、Mac
II に NetBSD
をのせてサーバーに使うことを考え、実際にインストールまでしたのだが、Mac
II
をサーバーにしてしまうと私の使うマシンがなくなることに気がつき断念した。マックがもう一台増えたらリトライしたいと思っている。
Mac II と Performa630 にはモデムを接続している。私が使う Mac II
からはインターネットプロバイダに接続して、ネットサーフィンしたりメールの読み書きに使っている。会社宛のメールを自宅で読んだり返事を出したりというリモートオフィス的な利用もしている。妻の
Performa630 からはFaxの送信がほとんどのようだ。
電話回線はISDNではない。検討はしたが、現在のマシンではシリアルポートが低速で64kbpsに達しそうもないので控えている。ルーターを購入してLANからインターネットプロバイダに接続することも考えているが、現状では(家庭用としては)ルーターが高価だし、接続料金の問題もあるので時期を待っているところだ。
わが家でのLANの構成と利用を説明してきたが、このような時代遅れのローエンドの環境でもネットワークの恩恵を享受していることを理解してもらえると思う。しかし、LANの機能のごくわずかしか使っていないこともたしかである。インターネットとの接続は別として、家庭内ネットワークのあり方は、まだ十分に考えられていないような気がする。オフィス環境でグループウェアが語られるようになって久しいが、家庭内では電子メール、スケジュール管理はそぐわないように思う。家庭でのLANの活用は決してオフィスの延長ではなく、独自のものがあるのだろう。リモートオフィスにしても「家で仕事をする」ためのものではなく、「家で子供と遊ぶ」ためのものであるべきだと思う。
今後、家庭内でのLANは好き者の趣味のためでなく実用のものとして一般の家庭に普及していくだろう。その形態、利用法は現在のLANとはちがうものになるのだろう。それがどんなものであるか、興味深いものがある。